G’day mate!ミーヤです。
今回は設計初心者向けにケーブル(金属)ダクトの基本設計について書いていきます。
この記事にたどり着いたということは、少なくとも『金属ダクト』もしくは『ケーブルダクト』・『ダクト』・『線樋(ぴ)』・『ワイヤリングダクト』についてなにか知りたいと思い検索したということですよね。
正式名称は金属ダクトというみたいですが、普段ケーブルダクトと呼んでいますのでこの記事はケーブルダクトで行きたいと思います。(規定などには金属ダクトと書かれています)
見た目は細長い箱みたいで単純な形状のケーブルダクトですが、いざ一から設計しろと言われればいろんな知識が必要となってきます。
設計初心者には少しハードルが高いです。
案件として、先輩が過去に書いた図面の幅や高さだけのストレッチで済む場合も中にはありますが、この機会に一度、金属ダクトについて学んでみて下さい。
私自身は設計業務経験15年の中小企業(製造業)の設計者です。
今現在もバリバリ図面を書いています。
先週も現場調査に行き只今、ケーブルダクトの設計中です。
業界により呼名がいろいろ変わるケーブルダクトですが基本、電線を収納して管路として使うことはどの業界でも一緒だと思います。
又、業界により形状や仕様も様々です。
細かく言えば、本体・蓋の形状、蓋を止めるボルトのサイズやスリーブの締結方法(ボルト止めやリベット止めなど)、材料、材質、表面処理、雨仕舞方法(CRパッキン)、セパレーターの有無、接続方法、支持方法、防火対策など、あげればきりがありません。
ということで今回は筆者が今までに設計した金属ダクトの中から基本的な仕様の設計方法をお伝えしたいと思います。
それぞれの業界で仕様は違うと思いますので参考までに。
この記事の設計者としての立ち位置を確認しておきます。
0からの設計ではなく、客先仕様書や発注図などをもとに製品として製作できる図面(製作図)を製図する人とします。
この記事はこんな人にオススメ
- 設計初心者で金属ダクトの設計が初めての人
- ケーブルダクトの設計をしなければいけないが先輩が出張中
- ケーブルダクトの設計に興味がある人
- 具体的な形状や材質・仕様を知りたい人
- 図面に記載されてる情報以外の規定等も知りたい人
それではどうぞ!
いろいろなケーブル(金属)ダクト
まずはケーブルダクトがどんなとこに設置されいるかご覧ください。
道路の高架下の機器室周りや鉄道の線路わき
建屋の壁面
大型工場や発電所などの工業地帯
ビルの中等にも設置されいますが壁や天井の裏側に隠れているので、なかなか一般の方だと目にすることは難しいです。
ケーブル(金属)ダクトの定義
金属ダクトというのは、電気設備技術基準にて『幅が5cmを超え、鉄板の厚さが1.2mm以上の堅ろうな亜鉛メッキを施した金属製の樋』
線ぴとは『金属製の樋形の本体に電線、ケーブルを収納してカバーを取り付けるもの。材質は黄銅または銅で堅牢に作られ、幅5cm以下、厚さ0.5mm以上』と定められています。
使用する材質や表面処理、幅、材料の厚みで金属ダクトと線ぴに分類されます。
『幅が5cm以上、使用する鋼板の厚みが1.2mm以上』このキーワードだけ覚えとけばよいと思います。
一度、先輩に質問してみましょう。
意外とみんな知りませんよ。
サイズ選定
ダクトの大きさ(断面積)を決める時に注意しなければいけないことがあります。
『ダクトに収める主回路電線の断面積の総和は、ダクトの内部断面積の20パーセント以下とします。制御用電線及び信号ケーブルの断面積の総和は、ダクトの内部断面積の50パーセント以下とします。』
という規定があります。
が、実際のところはエンドユーザーや設計会社からダクトの高さや幅の指定があります。
一度、収納するケーブルを客先から聞いて占有率を計算して大きさを決めましたが、提出した図面から変更がかかり2度手間となったことがありました。
大きさ(断面積)は客先に決めてもらうようにした方が無難です。
しかし、この規定を知っていれば収納するケーブルがあまりにも多いときに客先に一言、『ケーブル占有率、大丈夫ですか?』と注意喚起をすることができるようになります。
材料選定
大きさが決まれば次は板厚と材質について検討しましょう。
一般的には薄板を使います。
経験上、厚みはt2.3かt3.2で製作することがほとんどです。
案件によっては、大きなダクトを設計することもあります。
そういった時は薄板のみで設計するのではなく等辺山形鋼などでフレームを作りがわを薄板で設計することもあります。
薄板のみで設計する時の材質はSPHC(熱間圧延軟鋼板)を使用することがほとんどです。
SPHCは比較的安価ですし、柔らかい材料であるため、曲げ加工性に優れていることが特徴です。
といっても一から材料を選定する案件はあまりありません。
エンドユーザーの仕様書や発注図でだいたい材質や板厚は指定されていることがほとんどですので。
中にはステンレスや高耐食性メッキ鋼板を指定されているエンドユーザーさんもあります。
必ず、材質と板厚の確認はするようにしましょう。
SPHCではなくSS400を指定されているエンドユーザーさんもあるので注意が必要です。
表面処理
材質が決まれば次は表面処理です。
私の業界では溶融亜鉛メッキを施すことがほとんどです。
設置場所によりメッキ後、塗装を行うこともあります。
ステンレスの場合、酸洗は必須です。
こちらも、エンドユーザーの仕様書または、発注図を必ず確認しましょう。
具体的な設計方法
では具体的な設計をしていきましょう。
設計条件
- 板厚:t3.2
- 材質:SPHC
- 表面処理:溶融亜鉛メッキ
- ダクト断面:W200×H200
- ケーブルルート:スタート【ハンドホール】~ゴール【建屋壁面】
形状の設計
あらかじめ入手した情報で断面の大きさを決定します。
今回は横幅200mm×高さ200mmという条件で設計したいと思います。
箱状で蓋を止める耳の部分は25mm、蓋の端部は20mmの折返し(表面処理の溶融亜鉛メッキのメッキひずみを考慮)とします。
本体と蓋の締結はステンレスのM5のビス。
本体側はタップ加工。(板厚と使用するビスによりバーリング加工とする場合もあります)
板厚はt3.2。
M5のねじピッチは0.8mmですので0.8×3やま=2.4mmとなりますので今回はバーリング加工は不要とします。(メーカーにより変わると思いますが私の業界では、ねじが3やま出ていればOKとしています)
蓋同士の取り合いは図のようなスリーブとします。(下図)
ケーブルルートの確認
次に行うことがケーブルルートの確認です。
金属ダクトが必要ということは、ある地点A~地点Bにケーブルを施工したいということですので、必ずスタートとゴールがあります。
スタートとゴールを直線で結ぶことが出来れば簡単でいいのですが大抵の場合、障害物があったり支持金具の関係上、直線だけで設計することはできません。
では実際に設計してみましょう。
①最初に、ダクト中心位置(中心線)でルートを決定します。
②次に中心線をオフセットしてダクト幅(今回は200mm)を作図して障害物に支障しないか確認します。
③ダクトの中にはケーブルが通りますのでケーブル曲げRを考慮する必要があります。
曲がりの部分は面を取っていきます。(赤丸部)
これでダクトの外形が完成しました。
長さの設計
④続いて、ダクトの長さを設定していきます。
端部や障害物を避けるための役物以外の直線部は出来るだけ同形状のものとします。
取り付ける作業員の方や製作する工場の人たちにとっても同形状のものの方がいろんな意味で間違いが起こりにくいからです。(図面の枚数も減らせます!(^^)!)
⑤最後にダクト単体の長さを決めます。
調整代を持たせるためダクト間の隙間を10mm空けてあげます。
これでダクト単体の外形が決定しました。
あと、長さを設定するときに考慮することは重量です。
薄板といえども鉄ですのでそれなりの重量があります。
作業する人たちは現場で働く力持ちですがある程度考慮してあげましょう。(目安としては20kg以下)
屋上などに設置する場合はエレベーターに積めるかなどの確認も必要となってきます。
搬入の可否の確認も必ず行うように心がけましょう。
逆に1コ当たりを長く設定する場合は曲げ加工ができるかどうかを工場に確認してから設計することをオススメします。
(工場のもっている設備によって可否が変わる為)
今回は直線部750mmで割りつけました。
接続金具の設計
接続金具は大きく分類すると、ダクト本体の内側に入れるタイプと外側に嵌めるタイプの2種類となります。大きいサイズの場合は本体端部をフランジ形状としてボルトで締結することも稀にあります。
今回は内側のタイプで設計したいと思います。
支持金具の設計
ダクトの長さが決まれば次は支持金具の設計を行います。
金具自体は単純な形状で良いと思います。
今回は鋼板t4.5をZ曲げにした形状とします。
ワンポイント:ダクトと支持金具を締結するボルトとアンカーボルトを同線軸上に設定してしまうとボルト同士が干渉することや締め付ける時にナットが入らない場合があるので注意しましょう。
支持間隔は規定で3m以内と決まっています。
今回は金属ダクト1コに対して1コの支持金具で支持します。
(全体のバランスを見て決めます。)
支持金具の設計ポイント
- アンカーボルトとダクト締結ボルトが干渉しないか
- ボルトが締めれるか(手が入るか)
- 電動工具が入るか(アンカー打設時)
- 強度的に問題ないか(状況により強度計算必要)
考慮すべきポイント
メッキ用のガス抜き穴:L型などの形状だとメッキ層に入れた時、うまくガスが抜けずに沈まないことやめっきが角部に溜まることがあるので角部にガス抜き用の穴をあけておきましょう。
メッキ後穴はリベット等(下画像)で塞ぎます。
ケーブル結束用支持材:ダクトの中にはケーブルが通りますのでケーブルを捕縛するために丸鋼や平鋼を溶接で取り付けておきましょう。
特に立ち上がりダクトなどの場合には必須です。(参考値:取付ピッチ1m以内)
ダクト曲げ部のケーブル養生:ダクトに勾配を付けるときなどに注意することがあります。
ダクトの曲げ部に接触したケーブルが温度差で収縮し被覆が破れて最悪、漏電する事象が発生する場合があります。
角部には必ず丸鋼か配管の半割れ等ケーブルが擦れても損傷しない仕様にしておきましょう。
ゴムパッキン(防水):蓋の裏側には防水用にゴムパッキンを張り付けておきましょう。
業界によっては不要の場合もあります。
客先仕様書を確認してください。
セパレーターの有無:2系統のケーブルを同じダクトに収納する場合、セパレーターを入れる場合もあります。
こちらも客先の指示によります。
まとめ
お疲れ様でした。
今回は設計初心者向けにケーブルダクトの設計方法について書かせていただきました。
形状は単純な金属ダクトですが、いろいろ気を使うポイントがあります。
とりあえず、一から自分で設計しておけば、次に同じような案件が来た時に流用できる部分がたくさんありますし、その形状にした根拠も理解することができます。
最初は先輩の図面を流用するのではなく一から作図することをオススメします。
一から書くことで多少時間はかかってしまうかもしれませんが必ず自分の身になります。
ケーブルダクトのことなら○○さんに聞けば大丈夫と言ってもらえるような設計者を目指しましょう。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
おしまい。
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